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第2回 防災コラム:防災×グルメ

こんにちは!備え・防災アドバイザーの高荷(たかに)です。自然災害大国・日本において「防災対策」は重要なことですが、何からすればよいか分からない…、なんとなく大変そう…、そんなイメージをお持ちの方も多いのでは。

このコラムでは、生活に取り入れていただきたい身近な防災対策のノウハウを、ふんわりした解説でご紹介いたします。そうか、防災はこうすればいいんだ!というヒントを見つけて、ぜひ家庭の防災として実践してみてください。

第2話「防災×グルメ」を考える

今回のテーマは、「防災グルメ」です。非常食と言えば防災の花形とも言える対策ですが、かつては「非常食=カンパン」と地味なイメージをされる方も多かったのでは。しかし近年、非常食は劇的に変化をしており、ライフスタイルや想定する災害にあわせて、多様な準備を行うことができるようになっています。それでは、魅惑の防災グルメを考えて参りましょう。

非常食・備蓄食の種類と量は?

様々な種類が存在する非常食・備蓄食ですが、どのくらいの量を準備したらよいのか悩みますよね。マヨネーズがあれば生きていけるというマヨラーの方であれば、1日3本×1週間分で21本と即答できるかもしれませんが、人はマヨのみにて生くるものに非ずです。非常食の分量としては「最低3日分・できれば7日分」と覚えてください。

なぜ「3日分」なのでしょうか。例えば大地震などの大規模災害が発生すると、多くの生き埋め被害者が発生します。この時、消防や自衛隊など公助を担うパワーは、とりわけ生存率の高い72時間の間、人命救助が最優先となります。つまり、生きのびた方への支援が本格化するのは4日目以降、3日間は自助のみで乗り切る必要があるのです。

また近い将来の発生が想定される首都直下地震や南海トラフ地震など、被害の規模が極めて大きくなる可能性のある災害については、まともな支援の開始までに1週間程度の時間が必要になる恐れもあります。そのため、最初の3日分の食料は必ず用意、そして可能であれば7日分は自前でなんとかする、という考え方が必要なのです。

図1:行動食の例
夏場は熱中症予防のための塩アメなども追加したい。通勤や通学鞄に入れっぱなしにするなら、粉物は避けて羊羹などの練り物がオススメ。

①…緊急避難用の「行動食」

まず用意すべき非常食は、避難用のリュックなどに入れていただきたい「行動食」です。通勤・通学鞄に入れておくちょっとしたお菓子、走って逃げるための非常持出袋に入れておく食べ物などが該当します。行動食と言っても走りながら食べるということではなく、避難場所・避難所などで時間を過ごす際に食べる、簡易な食事のイメージとなります。

行動食は、栄養バランス食、栄養補助食品などと言われるものや、パウチされたゼリー飲料など、携帯性に優れ、カロリーや栄養が豊富で、そのまま食べられるものがオススメです。個人的なオススメは耐高熱・耐衝撃性能に優れる、和菓子の「ようかん」です。羊羹はチョコレートと異なり高温に強く、さらにビスケット系の食べ物と異なり衝撃にも強いのです。

②…避難生活用の「避難食」

次に準備いただきたいのは、避難所や車中泊など、避難先で調理すること無く食べられる簡易的な食事、「避難食」です。避難用のリュックやバッグに入れて自宅から持ちだし、支援が本格化する前の避難所などで生活をする際に食べる食事となります。調理と食器が不要で、常温のまま食べられるパンの缶詰や野菜ジュースなどが向いています。

図2:避難食の例
非常食の王様「カンパン」に変わり、現在は「パンの缶詰」などがオススメできる。常温で食べられてにおいが少ない、人目の多い避難所でも食べやすい非常食。

避難食はバリエーションも豊富で、いわゆる美味しい非常食や、火も電気も使わずに加熱できるセットなど便利なアイテムがたくさんあります。…が、ここでぜひイメージいただきたいことがあります。「人で溢れた避難所で…周りがお腹をすかせている中…熱々ホカホカの美味しそうなカレーを…自分の家族だけが食べる…。」

いかがでしょうか、お腹は満たされてもメンタルがやられそうな状況です。温かく、いい匂いのする、美味しい非常食は、それを食べるシチュエーションを考えて準備する必要があるのです。避難所などに持って行くのであれば、おとなしく食べられるものを中心に。一方、自宅で食べる非常食であれば遠慮は無用です、全力で美味しい物を確保しましょう。

③…在宅避難用の「備蓄食」

最後の防災グルメは、停電・停ガス・断水などが生じている際に簡易調理で食べる食事、備蓄食です。これは避難所へ少しずつ持ち込んで食べる他、基本的には自宅でライフラインの復旧を待つ「在宅避難」時に食べる食事となります。できればカセットコンロなどを準備して、温めたり、簡単に調理したりして食べられる様にするのがおすすめです。

図3:備蓄食の例
備蓄食は普段の食事の延長になるものが多い。リュックなどには入れず、キッチン周辺で保存して日頃から消費し続けるのがオススメ。

備蓄食は普段の食事として食べたり、もう1品おかずを追加したい場合のストックとしても活用できます。肉・魚・おかず・フルーツなどの缶詰類、カレー・丼物・パスタソースなどのレトルト食品、カップ麺やみそ汁などのインスタント食品、お湯を注ぐだけのフリーズドライやアルファ化米など、様々な種類があります。

備蓄食は量も多くなりますので、「日常備蓄(ローリングストック)」と呼ばれる方法をとることで、できるだけ楽に行うことを考えるのが長続きのコツです。いつも食べている食品を少し多めに買い、賞味期限が近いものから順番に食べて、特売に安く買って補充する、これを死ぬまで繰り返せば、備蓄食の準備は完了となります。

終わりに・入口には出口が必要

というわけで今回は、防災×グルメのお話でした。まずは「①行動食」と「②避難食」でおおむね3日分を確保、そして「③備蓄食」を追加して7日分を確保、という分量を目安に、非常食・備蓄食の準備を行ってみてください。

なお、非常食を準備する際には、最低同じ日数分の「非常用トイレ」の備蓄も必須です。食事を非常食・備蓄食に頼る状況においては、高い確率で停電・断水などが生じ、トイレも使用不能となっています。インプットとアウトプットはセットで用意、自宅の便器にかぶせて使うタイプの「凝固剤+袋」がセットとなったトイレをあわせて用意し、安心して食事ができるようにしておきましょう。

今回のライター
備え・防災アドバイザー
高荷智也

1982年静岡県三島市生まれ。
備え・防災をテーマとした、講師業・執筆業・コンサル業・メディア出演業などに従事する、フリーの「防災の専門家」。各種自己メディアでも防災情報を積極配信中。

1982年静岡県三島市生まれ。
備え・防災をテーマとした、講師業・執筆業・コンサル業・メディア出演業などに従事する、フリーの「防災の専門家」。各種自己メディアでも防災情報を積極配信中。