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第3回 気になるコラム:「身近な人を守るための約束事を決めよう」

そのアカウントは本物?あなたは気づけますか?

実在企業の偽アカウントに要注意!

最近、SNS上に企業の偽アカウントが乱立していることが報じられました。(「偽アカ」乱立、悩む小売りSNS上で個人情報詐取 2021年2月4日 日本経済新聞)。

偽アカウントの所有者は、あたかも企業からの注意喚起やキャンペーンと見せかけてユーザーの個人情報を記入させてだまし取ります。

次に、入手した「実在する個人情報」を使用してその企業のサイトへ不正に潜り込み、顧客情報など重要なデータを盗み出して闇サイトで販売したり、成りすましたまま勝手にショッピングを繰り返し、転売をするなどしていると考えられます。

典型的な手口は、ありもしないキャンペーンをでっち上げて氏名や連絡先を登録させるものです。SNSからあらかじめ用意した偽サイトへと誘導し、個人情報をだまし取るわけです。なかには、銀行口座まで記入させていたものがあったというから、穏やかではありません。

ユーザーをだます手口が巧妙化

悪質なケースでは、個人情報が流出したから再登録を、とウソをつくものも過去にありました。ユーザーを動揺させ、急かせて巧妙に注意をそらせるのです。

SNSやメールに埋め込まれた外部へのリンクをクリックする前に、その企業のホームページや報道を確認し、リニューアルのお知らせや情報漏洩の事実があるかどうか、または詐欺の注意喚起がないかどうか、必ず確認するようにしましょう。

事実が確認できなかったり不安が残る場合には、自分の情報を守るためと割り切って、面倒でも企業へ電話やメールで問い合わせてください。問い合わせが重なった結果、企業側が偽アカウントや偽サイトに気づき、警戒を呼びかけることにも繋がります。

周囲と情報共有し、被害を軽減

企業の偽アカウントや偽サイトを装い、キャンペーンなどと偽って個人情報をだまし取ろうとしたケースでは、「1年間の無料パスポートを手に入れるチャンス」などと煽るものも見つかっています。被害者には、「孫が喜ぶだろう」と応募してだまされた高齢者もいました。

偽アカウント、偽サイトを見つけたり、報道に接した際は、自分だけでなく家族全員で情報を共有することで被害の拡大を抑えることができます。折に触れて、友人や同僚と話題にすることも抑止の一助となります。

ネット利用層の広がりと合わせて、拡大する被害

高齢者の消費者被害が急増

買い物をしたり連絡を取ったりと、高齢者にとってもネットは毎日使う「日常のインフラ」として定着しています。それにともない、不慣れからくるトラブルも増え続けています。

国民生活センターが公表しているデータによれば、2018年度の約43万5千件の相談のうち、60歳以上が占める割合は49.4%と約半数にも及びます。60代、70代は、ネット通販関連の相談が多いのが特徴です(80代以上では電話や訪問による販売の相談が多い)。

東京都の渋谷区が、2021年度中に高齢者3千人を対象にしてスマートフォンを無償貸与すると発表した際、法曹界から消費者被害を懸念する声が出たのには、こうした背景があります。

よくわからない、を逆手に

「お試し無料のはずが、継続購入になっていた」といった「サブスクトラブル」のほかにも、「○○名様に○○万円プレゼントというキャンペーンに応募したら投資アプリの申し込みだった」「固定電話が廃止されるからと光回線を契約させられた」といった事例が報告されています。

画面が切り替わらないのにイライラして購入ボタンを何度も叩き、結果的に何十個も買ったことになってしまったという高齢者のトラブルも、実際にありました。

また、ワンクリック詐欺や架空請求、ウソの寄付や補助金に引っかかるのも高齢者に目立っています。何気なくクリックしたら画面に「ウイルスです!」などと表示され、スマートフォンが動作しなくなる「ランサムウェア(身代金詐欺)」に驚いて相談してくるのが典型例です。

高齢者は、事前にまとめて注意しても覚えてくれないこともありますから、何か困り事があったら自分で対処しようとする前に、その都度まず相談してくれるように取り決めておくと良いでしょう。

国民生活センターや地域の消費者センターの電話番号を、わかりやすい場所に掲示しておくのも役立ちます。

ネットの接触時間が増えて危険にさらされる子ども

「SNSで12歳の女児にわいせつな行為を教えたとして20代の会社員の男を逮捕」「オンラインゲームのアプリを通じて知り合った女子中学生を誘拐したとして30代の会社員の男を逮捕」「SNSでの何げないコメントが少年ら50人を巻き込む乱闘傷害事件を引き起こし逮捕者も」

これらは、近年、実際にあった事件の一部を要約したものです。

もはや小学生にもネットは欠かせないツールとなっています。コロナによる緊急事態宣言などによってリモート授業や登校日の削減が実施されたり、課外活動もSNSやメールでの連絡となったことで、子どもがネットに接する時間、そしてネットで誰かと知り合うきっかけは増える一方です。

実際に小中高生と話してみると、子どもの生活の中でネットが占める「割合」の大きさに驚かされます。SNS、オンラインゲーム、動画サイト、まとめサイトを利用してネット上で不特定多数と繋がるとともに、それらを情報源として現実の友人知人と「ネットを使って」交流を深めるのが当たり前のこととなっています。

ネット上だけの交流にも違和感がない子どもたち

ネット上の著名人に憧れ、真似をし、自分もネットのなかで有名になりたいと思っている子どもは大勢います。不穏なのは、「ネットでしか知らない」にもかかわらず、ネットやゲーム内の著名人とすでに会って話したかのような親近感を持っている様子だったことです。

昔、知らない人に付いていってはいけないと大人から叱られましたが、いまの子どもにすれば「ネットで知ってる人は、もはや知らない人ではない」という認識なのでしょう。「実際に会ったこともないのに」といった、大人の道理は通用しないと考えた方が良さそうです。

とはいえ、ネットはあくまでも仮想空間であり、現実世界の一部分ではあっても全てではありません。しかも、画像や映像を加工したり、ウソのプロフィールを堂々と載せたりと、「フェイク」が簡単にできてしまう「世界」です。

子どもをどうやって守れるか

止めろと言ったところで、今さら子どもがSNSやゲーム、チャットを止めるはずもありません。隠れてやって取り返しのつかないトラブルに見舞われるぐらいなら、オープンにして家族内のルールを決めてしまった方が得策です。その際、ノートなどを使って文書化しておくと、ビジネス上の契約書と同じく「たしかに約束した」という感じになるため、実効性が増すでしょう。

人間としての信用や信頼は、現実世界で対面してもなお、なかなか判断が難しいこと、ましてやネットを通じただけでは簡単にウソをつかれたり、だまされてしまうことは、大人が教えるしかありません。被害と引き換えに子どもが学ぶという悲劇に遭わさないためにも、ネットと現実世界のどちらにも存在する悪意や危険について、子どもとじっくりと話す時間を持つのは、とても重要なことです。

最後に、子どもは大人の背中をよく見ています。大人がいい加減なネットの使い方をしていると、子どもは敏感に察知して真似をしはじめます。

子どもたちが安全な、実りのあるネットライフを満喫するために、まずは大人がネットときちんと向き合うことが大切だと思います。

※データは国民生活センターホームページ「テーマ別特集「高齢者の消費者被害」より

今回のライター
井上トシユキ

1964年京都府京都市生まれ。同志社大学卒。会社員を経て、1989年より取材執筆活動 を開始。ITジャーナリスト・コメンテーターとしてITから時事問題までメディアへの出演及び寄稿・論評多数。ラジオ・企業および学術トップへのインタビュー、書評も多く手がける。専門分野は IT・最新インターネット事情。

1964年京都府京都市生まれ。同志社大学卒。会社員を経て、1989年より取材執筆活動 を開始。ITジャーナリスト・コメンテーターとしてITから時事問題までメディアへの出演及び寄稿・論評多数。ラジオ・企業および学術トップへのインタビュー、書評も多く手がける。専門分野は IT・最新インターネット事情。